2004年11月3日総会にて(藤沢市民会館)

心臓突然死防ぐAED   日本光電PAD推進室 桐谷純室長

 講演する桐谷室長

 電気ショックで除細動 音声指示で簡単操作

 日本光電工業の桐谷と申します。きょうここにお持ちしているのは「除細動器」といわれるもので、一般の方が使うことを前提に造られています。
 南淵先生からお話がありましたように、心臓が発作を起こすとあまり動かなくなり、脳に血が行かなくなります。そうすると脳は10秒で機能を止め、人間は意識を失います。心臓の周りの血管は心臓に近いですから、ちょっとでも動くと少しは血が流れますので、4分ぐらいは心臓は多少動いています。でも、やはり血が十分に回らなくなって4分ぐらいたつと、細動という心房の筋肉がけいれんを起こしている状態になります。こうなると完全に血の流れが止まり、大体4分で心臓は完全に動きを止めてしまいます。
 ただ、細動を起こしている器官にこの除細動器から強い電気ショックを与えるとその心臓は元に戻ります。全部戻るわけではないのですが、かなりの確率で戻ります。ただ、これは早いほうがいいのです。細動を起こして1分以内であれば、統計的には96%ぐらいの心臓が元に戻るといわれています。1分たつごとに10%ずつ下がって、10分たつと4%ぐらいしか戻らないといわれています。ですから、とにかく早くやることが大事なのです。
 皆さんのだんなさんが、突然、心室細動で倒れた。意識を失われた。そこで何をするかというと、まず119番です。間違ってもお子さんのところに電話したりしないでください。かなりの確率で、まずお子さんに電話して相談する方がおりますが、そうではなくてまず救急車を呼んでください。消防署に電話が行ってから2分ぐらいで救急車に出動指令が来ます。そこから救急車が現場に来るのに東京では平均6分といわれています。最初の3分間、次の2分間、この6分間で、もう11分たっています。ですから、そのときに来た消防士さんがこれを使っても、実はほとんど助かる見込みはありません。救命率は数パーセントに下がっています。 そういうことで、とにかく早くやれば治るからということで、この器械が造られました。この器械は非常に簡単にできています。基本的には何も知らない人がお使いになっても使えます。
 実際にこれを今、使ってごらんに入れます。まずふたを開けると、自動的にこの器械に電源が入ります。 そうすると「電極を完全にセットしてください」と、音声指示があります。2つの電極があって、一つを左のここに張ります。もう一つをこちら側に張ります。そうするとここの電極からここの電極に電気が流れて、心臓に刺激が加わって細動が止まるのです。「患者に触れないでください。心電図の解析中です」今、実際に心電図を解析して、この器械が除細動をすべきかどうかの判定をしています。
 除細動が適用となると「除細動の適用です」の音声で、充電が始まります。今ここに電気をためています。充電してコンデンサーにため、一気に放電するわけです。
 「放電します。患者から離れて点滅ボタンを押してください」の音声でこのボタンを押すだけです。これでもう終わりです。  
 危険なのは、動作中に触るのだけはやめてください。強い電流が流れますから、触ると感電しますので、離れてください。それ以外は何もありません。
 電極を二つ張って、器械が除細動適用じゃない場合には動きません。この器械自体が除細動すべきかどうかを判定します。もし除細動を起こしてなければこの器械は動作しません。充電もしませんので、触っても何も動作しません。ですからこの器械が除細動を検出すれば充電して、あと「ボタンを押してください」の指示に従ってボタンを押すだけです。これで早ければ、90何パーセントの確率で除細動は取り除けますので、心臓発作には非常に効果のある器械です。
 消防士さんも「家庭の皆さんが1番バッターです。あなた方が最初に塁に出ていただかないと、救急車が来ても何もできません。とにかく最初にそれをやっていただければ、救命救急士が必ず病院まで生きたまま運んで行きます。1番バッターが出ないことには2番バッター以下は何もできませんので、とにかく頑張って現場で早く処置してください」と言っています。
 このAEDは関西国際空港には既に設置されています。最近はホテル、ゴルフ場でも備えるところが増えてきました。多分、今年中に都内の駅にはほとんど入ると思います。そういう形で、町で倒れた場合に救急車が来るまでじゃなくて、そこにいる人がすぐにこれを持ってきて使って治療できるようにしようということなんです。
 ただ、発作の80%は自宅で起きるといわれています。そういう点ではやっぱり自宅にあるのが一番です。器械ですから100%全部助かるというお約束はできませんし、絶対に故障しないとも言えませんが、とにかく早ければ早いほど除細動ができて助かる確率が高いということです。
 きょうはパンフレットも持ってきておりますので、ご希望の方にはお渡しいたします。AEDを一度見て、実際にどんなものかを考えていただければ幸いです。ありがとうございました。

(この講演内容は幹事会の責任で概要をまとめたものです)