2005年11月13日講演会 (大和市生涯学習センターホール)

心房細動と外科治療    

小坂眞一(大和成和病院副院長・心臓外科医)

講演する小坂眞一先生と小坂先生の患者

 皆さんこんにちは、小坂です。皆さんは「心房細動」というのを聞いたことがあると思いますが、もう一つ「心室細動」というのがあります。心室細動は救急救命で、電気ショックをかけたり、心臓マッサージをする心肺蘇生で、非常に怖いのですが、心房細動はそんなに怖くはなく、そのまま死んでしまうような不整脈ではありません。しかし実はやっかいな不整脈でもあるのです。スライドを見ながらご説明します。
 今年、心房細動の外科的治療を10人の方にしました。その理由をここに示します。
 私自身が僧帽弁置換を手術した患者さん2人が、去年同じ理由で再手術になりました。その後、お2人とも実は心房細動はそのまま残っていて弁だけを取り換えて、血液さらさらの薬ワーファリンを飲んでいました。どういうことが起きたかというと、2枚のディスクが動くのですが、2人とも血栓弁という人工弁に血栓がくっついて、その1枚が全く動かなくなって同じ状態で同じ再手術をせざるを得なかったということです。
 これだけしっかりワーファリンを出して、トロンボテストも検査して綿密に診ているのに人工弁が固まった。何だろうとよく考えてみると、心房細動が原因だと気づいたのです。これは一つの出来事なのですが、長嶋さんが突然倒れましたね。あれは発作性心房細動です。普段はないのですが突如として心房細動になって、そのときに心臓にできた血栓(血の塊)が頭に飛んで脳梗塞になりました。それも一つの理由です。
 もう一つ理由があります。この心房細動の手術は10数年前から実は存在していました。しかし、その手術は心臓をかなりの範囲で切って縫合するという複雑な手術だったので時間がかかります。効果はあるが、それを達成するのにすごく時間と労力がかかるのでちょっと私は引いていました。去年から今年にかけて手術が簡単にできる、手術器具みたいなもの、「デバイス」といいますが、このデバイスがコマーシャルベースで使えるようになりました。それと同時に、大学の後輩で心房細動を昔から勉強している医者がいて、その人が丁寧に教えてくれたということがあります。

  心房細動が起きるとどうなるか

 そもそも心房細動が起こるとどうなるかというと、心房細動では死ぬことはありません。ただし、起こると動悸がして少し血圧が下がります。原因は心房が正しく収縮しないでけいれんしてしまうのです。さざ波のごとくゆれるわけです。そうなると血液が心房から心室に勢いよく出て行きませんから、血液が漂ってよどんで血の塊ができます。心房細動では心房から心室に血液が押し出されませんから、心室から出る血液の量も減って血圧も下がります。
 これは教科書です。方眼紙の上に書かれているのが正常な心電図です。「P」と書かれているところに小さい山があります。あれが心房の正常な収縮です。その次にすごくシャープな「R」というとがった波形がありますが、これが心室の収縮です。最後の「T」は心室が収縮して電気的に興奮した後、回復した姿です。これは正常です。Pがあって、Rがあって、Tがある、この繰り返しなのです。ですから方眼紙の上に、心臓は6回収縮したということが見てとれるわけです。次へ行きます。
 今のが正常で、今度が心房細動です。心房細動は右の絵にあるように、心房の至るところ、左と右がありますが勝手に興奮し始めるので、さっき示したP波が全く見えない代わりに、ゆらゆら揺れた線が見えると思います。Rもちゃんと出ますが、Rの間隔が今は七つぐらいあると思いますが、全部乱れています。方眼紙を見てください。最初のRとR、シャープの山と山の間と、次のRとRの間隔が全く違います。その次も違います。全部、脈と脈の間隔がイレギュラーなのです。一番下に書いてあります。これが心房細動です。
 心房細動だと、けいれんが起きて心房が揺れていますが、それだけではなかなか血栓はできません。昔、ウイルヒョウという偉い病理学者がいました。まず血液がゆっくり流れて、ベトベト血で、心房や血管の何でもいいのですが、血液が流れる、血液が接する血管や心臓の壁の内側の面がざらざらしていると血栓ができやすいと言ったのです。
 「どうして頭に飛びやすいのか」というと、心臓から出る血流の4分の1は頭に行っています。それから心臓から出る大動脈、大動脈から出る一番大きな最初の枝が頭に行く血管の頚動脈です。ですから頭に飛びやすいということになります。次をお願いします。
 これは私の本の中からとった絵です。これが左心耳、これが右心耳です。こんな感じで心房の中に袋状になっている部分があります。心房細動になると、ここに血液がたまってよどんで血栓になり頭に飛んで行きやすくなります。ですから、左心房、とくに左心耳の大きい人は心房細動になったときに血栓が飛びやすい人だといえます。
 心房細動の原因というのは、実際には甲状腺機能亢進症とか、心臓弁膜症(僧帽弁膜症)、高血圧、心不全の方もいますが、全く心臓病がないのに心房細動になってそのまま固定してしまうという人もいます。心房細動の原因は何かと考えると、60歳以下は1万人に1人しかいません。70歳以上になると20人に1人ということで、簡単に言えばある種の老化現象なのです。
 その中でも先ほどから繰り返して言ってますが、血栓ができて飛びやすい人はだれかというと、65歳以上でたばこをのむ人です。たばこをのむ人は血が濃いですよね。糖尿病、心不全、高血圧、僧帽弁膜症、利尿剤を飲む方は血液が濃くなります。スポーツで大汗をかく。長嶋さんは、サウナが好きで焼肉が好きだった。お酒好きというのは、結局、お酒を飲むとお小水がたくさん出て血液が濃くなるのです。それから左心房や左心耳の大きい人ということです。
 心房細動にはいろんな種類があります。一生で1回しか起こらない一過性心房細動、発作的に起きて自然に治ってしまう発作性心房細動は意外と多いです。これは英語でPAF(パフ)と言います。持続性心房細動は治療で治りますが、自分ではなかなか治らない。治療というのは電気や薬です。慢性心房細動は治療してもすぐまた心房細動になり、治らない。これをCAF(カフ)と言います。覚えていただきたいのは、発作性のPAFと慢性のCAFです。


 
心房細動の治療について

 治療について説明します。予防するための薬もあります。心臓の中をカテーテルで焼くというのもあります。それから手術もあります。止めるのは薬があります。電気ショックもあります。ペースメーカーで止めるというのもあります。血栓症の予防は、抗血栓療法です。心不全が心房細動で起きているとしたら、強心剤や利尿剤やペースメーカーです。心拍数が多過ぎる人は、ベータブロック作用の薬があります。
 先ほど来、言っている血液さらさらの薬、ワーファリン(WARFARIN)について説明します。1920年から1930年にアメリカのニューイングランド地方で、牛乳の中に血が混じってしまい売り物にならないから困ると、農夫のカールソンがウィスコンシン大学のリンクという科学者に、「どうもおれは牛が食べている発酵したスウィートクローバーが悪いと思うよ」とトラック1台分のスウィートクローバーを置いていきました。そしてリンクが、中に血液さらさらの薬があることに気がついて、それを合成してワーファリンをつくったのです。
 ワーファリンはどういうときに飲むのかというと、例えば高血圧とか心不全とか左心房が大きいとか、心房細動になったときです。それから皆さんご存じの人工弁(機械弁)が入った後です。肺梗塞になった場合は1年ぐらいは飲んでもらいます。バイパス手術のみならず、手足の小さい血管をつないだ場合に1年ぐらい飲むことがあります。これは外科医によって違いますが、バイパス手術の後で、特に静脈を使った方は1年ぐらい飲んでいただくことがあります。
 肺梗塞の原因ですが、深部血栓性静脈炎です。腰や足の深いところの静脈に血栓ができた人は3ケ月ぐらいは飲んでもらいます。それから心筋梗塞で心室の壁が動かないと左心房に血栓ができたように、そこに血栓ができることがあり、この場合も溶けるまで飲んでもらいます。
 ワーファリンの量は、トロンボテスト、あるいはプロトロンビン時間国際標準値比(PTINRといい、今はINRと呼ばれていることが多い)という二つの血液検査(どちらか一方でもいいと思う)で決めるようにしています。トロンボテストは正常が大体80%から120%、INRは正常が1.0です。ヨーロッパではトロンボテストが多く行われていて、アメリカではINRを使っています。
 トロンボテスト、あるいはINRの目標値は疾患病態によって違います。大動脈弁でリズムが正常であればトロンボテストの値は大体20%弱で、INRも1.7から2.4です。僧帽弁の場合は、トロンボテストで12%から17%、INRは2.0から2.7です。INRは高いほど血液がさらさらになり、トロンボテストは低いほど血液がさらさらになります。ただし、心房細動が合併した人は血栓をつくりやすいですから、トロンボテストの数字は低いほうに、INRは高いほうにもっていくのが常識になっています。


 
手術してまで治す必要があるか

 話を心房細動に戻します。「心房細動では死にませんが、手術してまで治す必要があるのか」という問題です。心房細動というのは頭に飛んでも人間は簡単には死んでしまうことはありません。それを治そうというのであれば、その心房細動の手術をする人は少なくとも、心臓の手術を500例以上やった人でないと私は頼まないほうがいいんじゃないかと思っています。
 心房細動の手術をお薦めしたい人をここに列記しました。心房細動の手術を絶対的に受ける必要のある人はいません。ただ、受けたほうがいいと思われる人は次に示す通りです。例えばワーファリンを飲んでいても、「また飛んじゃったよ」という人です。あるいは「おれはワーファリンを飲みたくない。昨日も飲むのを忘れちゃった」という人は受けたほうがいいかもしれません。
 過去に心房細動で電気ショックを受け、その後、薬を飲んでも発作が起きて「電気ショックを3回も受けちゃいましたよ」という人は、10年間に3回ならいいんですが1年間に3回だったら手術を考えてもいいと思います。心房細動があって、普段はいいけど、動くと「ダッダッ」と速くなって薬を飲んでも階段を上ると息が苦しいという人、心房細動になると脈が速くなり過ぎて意識が遠くなる人、心房細動を治して一切薬から縁を切りたい人、病院にも行きたくない人も受けたほうがいいかもしれません。
 「心房細動の手術はだれが考えたか」と先ほど言いましたが、1991年にアメリカのジェームス・コックスという人がメイズ(MAZE:英語で迷路という意味)手術というのを発表しました。
 心房に切開を入れて、またそこを縫います。そういうところは電気が伝わりません。電気的なブロックを心房の中につくって、勝手に電気がぐるぐる回ったり、興奮しないようにして、正しく電気が心臓の上の方から心臓の先の方に伝わるようにするのが、このメイズ手術です。彼は200例に行って、95%の人が心房細動が消えたと発表しています。
 メイズの手術も実際には新しくなっています。それはデバイスというものもありますけれど、今まで横に切るメイズだったのが、大和成和病院にも来る日本医科大学の新田隆先生が、主に心臓の上から見て縦に放射線状に切開を入れるというRADIAL法を行って注目を集めています。いろいろなブロックとか、余計な不整脈が出ないように、あるいは心房の収縮が保たれるように切る方法を考えたので、この二つの点、切り方とデバイスでメイズ手術は大きく進歩したと思います。次をお願いします。
 これはコックスのやり方です。絵がなかったので古いほうを持ってきました。こういう形で、向かって左側が右心房、その後ろに肺静脈と書いてあります。あるいは右の上のほうの左心耳と書いてあります。ああいうふうに切っていきます。スライドをお願いします。
 今度は心臓を裏側から見たらこういうふうになります。こういう形で切っていくのです。ただし、今は切るのではなく、デバイスを使います。ちょうど刃渡り7センチぐらいで、メスではなく、はさみでもないのです。内側をよく見ると、ニクロム線みたいな電線が走っています。この二つの電線で挟んで通電して、その部分を電気メスのように焼いて電気を流れなくします。ですから7センチのところを切って縫うと、どんな外科医でも15分ぐらいかかるのですが、これでやると30秒で終わってしまいます。


 
手術の5例を紹介

 今年、私が手術させていただいた方、10名を列記しました。年齢は一番若い人が52歳、一番上の人は71歳です。男性と女性では女性のほうが若干多いです。診断はCAFが慢性心房細動、PAFが発作性心房細動で、発作性の人が3人います。それ以外に弁膜症が5人、バイパス手術をやった方が2人、心房中隔欠損が1人、全く心房細動しかない人は2人となっております。
 結果は、洞調律で正常のリズムになった方が全部で8人います。残り2人は実はペースメーカーを入れました。この人たちも心房細動ではありません。ただし、心房細動以外に洞機能不全症候群を持っていたと思うのです。要するに心房細動は治ったけれど、脈が少し少ないので心房にペースメーカーを入れて心房を打たせて、心室もそれに合わせて打たせているということです。
 10人のうちの5人を説明します。これは今年の第1例目で1月にやった方です。僧帽弁膜症で豚弁を入れます。フルメイズというのは、右房も左房も両方ともメイズをやったということです。この方は洞調律でワーファリンは6月に中止しています。次をお願いします。
 この方の術前の、今年1月13日の心電図です。見てわかるように、基線は雑音ではなくて、ああいうふうにさざ波のごとく揺れているわけです。これが手術をするときれいなP波が出ています。ということで、正常な洞調律に戻っているということです。
 次は56歳の女性です。僧帽弁膜症と大動脈弁膜症があり、僧帽弁と大動脈弁の両方を換えてメイズの手術をやりました。この方は若干、脈が少ないものですからペースメーカーを入れました。この方は人工弁(機械弁)を入れていますので、ワーファリンを今も使っています。
 3人目の方は68歳の女性です。この方は20歳台から脈が速くなって、救急外来、救急車で入退院を繰り返していました。私が大和成和病院で当直しているときに足に血栓が飛んできて、心電図をとったら心房細動ということでカテーテルをやりました。冠動脈にも狭窄がありましたから、冠動脈バイパスとフルメイズ手術をやりました。次をお願いします。
 この方の心電図も、やはり術前はさざ波のごとく揺れる心房細動で、術後はP波はちょっと小さいですけれども出ています。洞調律に戻ったということです。
 次の方は63歳の女性です。15年ぐらい前から「心臓に異常がある」と言われたのです。時々発作性心房細動で救急外来でクリニックに来ていたのです。前にも超音波をやっていたのですが、今回ははっきり心房中隔欠損、心臓の壁に小さな穴があいているということで、心房中隔欠損閉鎖術とフルメイズ手術を行いました。この方は以後、発作はありません。 
 次の方は64歳の男性で、慢性心房細動のみです。平成12年からワーファリンを5年間ぐらい飲んでいました。65歳を超えると心房細動の人は脳に脳梗塞、血栓塞栓症を起こしやすいというデータが出てその説明をしましたら、「治るものであれば治してほしい」と息子さんが非常に積極的でした。本人はちょっと嫌がっていましたけれども手術をしました。そうしたら心房粗動になりましたけれど、そのまま退院しました。しかし8月24日、約1ケ月後の心電図では洞調律に戻って、今も心電図は正常リズムでワーファリンは次からは中止にしようと。メイズの手術をしても心臓の内側に縫い目がありますから、そこには血栓ができやすいのです。いわゆる人工弁のうち生体弁、豚牛弁で、メイズ手術の後もうまくいっても3ケ月はワーファリンを飲んでもらいます。でもこの方は、次からはワーファリンを中止しようと思っています。  
 この方の術前の心電図です。この人はどちらかというとのこぎり状に、かなり粗い粗動に近い心房細動です。次をお願いします。術後はこんなふうにちょっとしつこいですけれどきれいなP波が出て、心房の収縮は超音波で見せますけれど戻りましたということです。
 最後は64歳の男性です。心房細動を過去に3回しか起こしてないのですが、3回とも歩いていて道路に倒れたり、意識が遠くなるとか、意識障害を起こすぐらい、170ぐらいの速い心房細動を起こします。カテーテル検査をやりまして冠動脈も狭いということで、メイズと冠動脈バイパスをやりました。術後に1回心房細動を起こしたり、ぜんそく発作を起こしましたが無事退院しました。現在は発作は全くありません。
 術前と術後の超音波画像がありますから、それを見ていただきます。これは心房細動です。見て分かると思うのですけれども心房がこっちです。これが心室です。心房が全然正常に動いていません。弁の動きを見ると分かります。弁の開閉を見ると完全に不規則です。下の心電図も、とんがり山が不規則で、規則性が全然ないのです。心臓がいかにも苦しそうで、ばたばたして落ち着きがないというふうに見えます。
 今度はこの方の術後を見てもらいます。この弁の動きを見てほしいのです。非常に規則正しく開いて、心房もそんなにばたばたしていません。心室は非常に正しくきれいに動いています。個人情報があるので患者さんの名前を言えないのですが、本人は分かっていると思います。68歳の女性です。
 次の方は64歳の男性です。規則正しいように見えますが、弁をよく見ると動きが非常に不規則で僧帽弁から漏れています。心房細動の人は心房が大きいですから、僧帽弁逆流とか弁逆流を起こしやすいのです。これが心房です。全然動いていないのです。こっちが心室です。逆流もこういうふうにあります。これは術前です。ちょっと心電図が飛んでいますけれども、心電図も当然乱れています。こっちは左心房です。これは大動脈弁です。
 この方が術後どうなったか。この弁の動きを見てください。非常に正確に心房も収縮していると私は思います。逆流は軽くなったかなぐらいですが、この弁の動きを見ていただくと分かるのですが、非常に規則正しく動いています。心房、心室とも、全然ばたばたしていません。この方は趣味がプールで泳ぐということですから、これで安心して泳げるのではないかなと思います。
 次は3番目の方です。この方は最初の方のお姉さんです。僧帽弁の動きを見て分かるように非常にせせこましくてあわただしい。これは寝てやっている検査ですから、恐らくこの方が階段を上ったら心臓はばたばたになっちゃうと思うんです。当然、息苦しくなると思うのです。
 この方は術後は脈が少なくてペースメーカーを入れていますが、入れてもちゃんと心房が収縮しています。これは左心房です。これは僧帽弁です。心房が正常に収縮しているのが分かると思うのです。後でお話を聞きたいと思います。かなり運動能力は改善しているんじゃないかなと思います。こんな感じで心房細動は治るということです。
 ではさっきの結論を見てもらいます。結論に移ります。まとめです。約半年の間に10人の方に手術をして、10人ともおかげさまで非常にうまくいきました。大事なことは、心房が正常に収縮する結果、運動能力が非常に回復することが私自身も分かったのです。
 それからもう一つ付け加えなければいけないのは、術後は結構、一過性の心房細動を起こします。最初のうちは非常に自分自身、患者さんと一緒にあせったのです。いろいろ調べてみますと、この手術をして皆さんは大体1ケ月ぐらいは心房細動が起きたり、起きなかったりを繰り返すのです。ところが不思議なことに1ケ月ぐらいたつと、ほとんどの方はきちんと正常の心臓の動き、リズムに戻っていくことが分かりました。
 今日の会場は患者さんの会ですから、この手術を受けられた方が来ておられます。私は今、いいことばかり言いました。これから受ける方もいらっしゃるかもしれないので、受けた方の手術後の感想をお聞きください。

 患者の体験発表

 石井さん 私は7月25日に先生から手術していただきました。日常の症状としては、心電図にありましたように、大分、脈が乱れていました。心房細動ということであまり気にはしていなかったのですが、私の息子たちが「若いうちにやったほうがいい」ということで今回手術を受けました。術後3ケ月たちましたが、ワーファリンは前回の診察で中止という大変ありがたいお言葉をいただきました。私は従来から薬嫌いで、このワーファリンを6年ぐらい飲み続けていましたので、やっと解放されたということで、改めて先生にはお礼を申します。(拍手)
 
桐野さん 私の場合は仕事に行く途中に瞬間的に気を失ったりしたこともありました。また、家で女房と2人で本を見ているとき、両あごのあたりがしびれ感が出ました。女房に「こういうとき、おれの脈は乱れるんだけど見てくれよ」と言って脈を取らせたのです。そうしたら約200近くまでいっているのです。
 本人よりも女房が青くなり、そのまま近くの循環器内科の先生のところに、夜の10時ごろ駆け込みました。私は点滴を打って帰るつもりだったのですが、「一晩泊まっていけ」と言うので、「どうしても帰る」と言ったら、「死にたかったら帰っていいよ」と脅かされました。私の女房が小坂先生にお世話になっているものですから、そういう状態を話したら「ちょっと調べてみよう」ということでカテーテルをしました。
 発作性の心房細動という診断で、長嶋さんや小渕さんの例を聞いて、脳梗塞で不自由になるのも困るなと思い、「どうしますか」と言われたので、「じゃあ、やりましょう」ということで手術に踏み切りました。一番不安だったのは、先生の本でずたずたに心臓を刻まれるということでした。
 最近はいい機械ができており手術の時間も短いとのことで、いろいろ説明を受けました。「バイパスも1本狭くなっているので、併せてやりましょう」という話になり、8月29日に手術していただきました。術後の経過は非常に順調です。今月9日に伺ってワーファリンをもらいましたが、これでワーファリンを止めようかとおっしゃっていただけるほど順調に回復しております(拍手)
 
伊從さん 3月15日の朝、起きたら左足が冷たくて色が変わっていました。普通ではないので、慌てていつも診ていただいている先生にお話ししたら、「これは血管外科の先生に診ていただかないと分からない」と言われ、その日のうちに大和成和病院に参りまして小坂先生に診ていただきました。いろいろな条件がありましたが、「手術なさったほうがよろしいんじゃないか」と言われましたので、「じゃあ、お願いします」と返事して、6月27日に手術していただきました。
 私の場合は、家事をしていて高いところへ手を上げるとか、こごんで無理な姿勢を取りますとすぐ動悸が躍ります。思うように動けなかったものですから、手術したら楽に動けるのではないかと思いました。結果は手術していただいて本当によかったと思っています。体も自由に動きますし、散歩も坂道を上れるようになりました。10年前山へ登ったのが最後でしたが、これだったらまた山へ登れるんじゃないかなと思っています。(拍手)
 
岩波さん 2年前、会社に行くと急に息ができなくなってしまいました。それで会社の人に「救急車を呼んでください」と言って、かかっていた個人病院に行きました。個人病院では「ここでは手に負えない」ということで、海老名の総合病院に回されました。気管支も悪かったみたいです。ところが「気管支より心臓のほうじゃないか」と言われ、今度は海老名の東日本循環器病院に回されました。
 そこにしばらくかかっていたのですが、カテーテル検査をやるとき、一緒に風船もやってしまうといわれたので、ちょっとおかしいんじゃないかなと弟に相談しました。弟は救急救命士をやっています。救急救命士の仲間といろいろな情報を交換して大和成和病院を紹介されました。カテーテル検査で青木先生から「手術したほうがいいんじゃないかな。やるのなら1日でも早いほうがいい」ということで、小坂先生のお世話になることになりました。
 私は僧帽弁1個だと思っていたのですが、6月14日の前日、「三尖弁も悪い」と言われ、そのとき初めて二つやることを聞かされました。先生がおっしゃるには、「時間があったら、メイズ手術もやります」ということでした。そのときに僧帽弁と三尖弁とメイズ手術をやっていただきました。
 手術後は順調でしたが、不整脈がまだ治っていませんでした。しばらく経過を見ていましたが、脈が弱いということでペースメーカー手術を6月29日にやっていただきました。それからしばらくしてお薬が合いませんでした。薬を飲んだときに心臓がどきどきして、先生はそのときにいらっしゃらなかったのです。朝方、看護師さんが急にばたばた来て「岩波さん」と起こされたのです。眠いんですが眠れなくてうとうとしていました。そのときに9秒間、脈が飛んだそうです。その9秒間、脈が飛んだおかげで不整脈が治りました。(笑)
 それから不整脈は検査しても一切出ません。退院の際に先生がおっしゃるには「あなたはサイボーグになったのだから、もう大丈夫だ」と言われました。階段でも、普通の駅の階段でも、2〜3回休んでから上るような感じだったのが、人より速くすたすたと歩けるようになりました。(拍手)
 
久保田さん 私は7年ぐらい前から心房細動で、近くの開業医にかかっていました。「薬を飲みながら治したい」と申し上げて、飲んでいたのですが、そのうち体が徐々に弱ってきて、階段は上れなくなり、毎日の生活がすごく大変で、これはどうしたものかと非常に心配になりました。妹が大和成和病院で手術を受けたことを聞いていましたので「私も同じ病気だわ。できたら診ていただきたい」と言うと、妹と弟が先生にお願いしてくれて小坂先生にお目にかかりました。
 先生は「この程度だったら、お薬で多分治るでしょう」とおっしゃってくださったんですが、エコーをしたら心房に血栓があることが分かり、7月27日に手術を受けました。 
 その後、ペースメーカーも入ったので、体の具合がとても良くなりまして、階段もすたすた上れます。階段を下りるのがすごく大変だったのですが、その移動もずいぶん楽になりました。齢なので毎日同じ状態というわけにはいきません。「今日はちょっと具合が悪いわ」ということもありますが、3ケ月以上たちましたので手術の痛さも徐々に忘れつつあります。主人も大和成和病院でお世話になったのですが、2人で元気になってまた旅行や楽しい人生を送るように努力しようねと話しております。(拍手)


 皆さん、ありがとうございました。今、アメリカで心房細動の方が200万人いるそうです。人口からいうと日本人も100万人はいないでしょうけれど、かなりの方が心房細動になっています。これを加齢現象の一つととらえてしようがないと思うか、それとも自分がやりたいことがあって、それに向かってこの病気を治していくかは、皆さんがご自分で考えることだと思いますが、心房細動は手術して治るということをご記憶くだされば幸いかと存じます。どうもありがとうございました。(拍手)

(この講演内容は幹事会の責任で概要をまとめたものです)