2004年5月16日総会にて(グリーンホール相模大野)

心臓リハビリテーションと運動

上原さやか

 大和成和病院理学療法士 

 

 心臓手術をされた皆さんは、退院後の指導の中で運動を勧められると思いますが、「なぜ運動をするのか」と申しますと、冠動脈の危険因子の防止が目的です。冠動脈危険因子とは、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満・喫煙・ストレスなどです。これらを合併することにより動脈硬化がさらに進み、冠動脈に狭窄を起こす可能性が高くなります。
 皆さん「運動してください」と言われても、さてどうやって運動しようかということから始まりますね。人によって運動のレベルも体力も違うし、運動していた方が今回オペをして、また日常生活に戻って運動するというのと、もともと運動しない方がオペをして病院で「運動をしてください」と言われて運動するというのでは、かなりの体力差があります。
 まず運動の方法として、息切れなく会話ができる運動、会話しながら歩ける速さをお勧めします。息がぜいぜい鳴っても頑張るというわけじゃなくて、軽く運動しながら歩ける速さということですね。長さとしては1日30分程度。これは10分を3回とかに分けても効果は一緒です。
 これを週3日から5日。1〜2回は体を休めるような形で取っていただけるといいと思います。毎日運動しなきゃいけないと考えると、それがすごいストレスになったりしますので、自分でうまく計画を立てながらやるのがいいと思います。
 運動の種類ですが、まずは有酸素運動です。軽い運動で息がはずむ程度を30分から1時間程度。これは歩行、自転車がよろしいです。統計では、歩行は5千から1万歩を歩くことによって虚血性心疾患への移行が少ないといわれています。
 よく女性の方で「ひざが痛くて歩けない」と言われる方がおられます。そういう方は自転車がお勧めです。自転車だとひざの痛みもなく、運動の調節もできますので、有効だと思います。
 筋力運動も、いろんな種類があります。
下肢の筋肉は第2の心臓と言われます。私たちが立っている状態だと重力の影響で下肢のほうに血液がたまります。それを戻す作用として、下肢の筋肉、ふくらはぎとか、足首から上の筋肉というのがすごく必要になってきて、それを戻すことによってうまく循環ができるようになります。そのために第2の心臓という言われ方をされています。筋肉を動かすことによってポンプ作用というのが働いて、心臓への血液の戻りが良くなるわけです。
 例えばチューブ運動ですね。ゴムチューブ、ストッキングとかそういうものを使いながら足のつま先のほうに引っ掛けて、上のほうにぐっと引き上げる運動です。逆につま先の方に引っ掛けて、足を下の方に押し返すことも有効です。これは使う筋肉が違いますが、どちらを選択しても結構です。
 それから寝てやる運動。上げるほうの足の反対の足を地面に着けて、この足を上に上げるという方法です。これは足の運動でもあるんです。腹筋が弱いと足は上に上がらないので、こういう運動も含めながらやっていくといいと思います。
 運動療法での注意事項は、自分の状態というのをよく知っていただいて、その上で自己管理をしっかりと行うというのが、一番大事なことだと思います。
 不眠や体調不良のときは控える。そういう時は心臓が時々違う動きをすることがあります。そういうときに頑張ってしまうと、目まいが起きたりしますのでそういうときの運動は控えてください。
 次は運動や入浴前後に、コップ1杯の水やお茶を飲むことです。運動したり入浴することで汗が大量に出ます。汗が出ると血液の中の水分が減るので、血液の粘着度が上がります。そうすると詰まりやすくなるので、そういうときはコップ1杯の水を飲んで対処してください。
 また、運動中に息切れや動悸、目まいがする場合はすぐ中止してください。これらが出てきたら、まず落ち着いて調子をみてください。それでも何かおかしいなと思ったら主治医に相談してください。過度の運動にならないように注意するということですけれども、まずは大事なことは自分の管理を自分でして、自分に合った運動を選ぶということが前提だと思います。
 最後になりますが。これを見てください。かわいいですね。この猫を見ると、私は元気が出るんです。皆さんと次もこういう会に笑顔で会えたらなと思います。今、日本の平均寿命は延びていますが、寝たきりで寿命が延びるということと、自分がやりたいことをやって自分が望むことをできて満足に生活するということで寿命が延びるということとは、全然訳が違うと思います。そういうことを考えると今後、やっぱり自分のこと、自分の体調や健康は自分で分かっていなきゃいけないというのが、私の考えの中にあります。そういうことで自分のやりたいことをやって、満足のいく生活を皆さんに送っていただきたいので、私が特に運動を勧める理由です。
 皆さんと今後も元気良く、笑顔で会えたら素晴らしいこと、素敵なことだと実感しています。これからも、よろしくお願いします(拍手)。

(この講演内容は幹事会の責任で概要をまとめたものです)