2006年5月21日総会にて(大和市保健福祉センター)

大和成和病院心臓外科  武藤康司

患者が頑張ればそれだけ元気になる

 三重県出身で、南淵先生がこき下ろしている母校の奈良県立医大の卒業生の武藤と申します。(笑)私も大学には全く興味がなくて卒業して、ひょんなことでこちらのほうに来ました。私は某徳洲会で働いていました。実はその徳洲会の中に新聞があって、そこで南淵先生がコラムを書いていらっしゃったのです。医者になりたての私がすごく共鳴するような、本当に斬新なことをおっしゃっていたのです。でも私の周りの先生からは受けが悪くて、「何を言っているんだ」と本当にそういう状況だったのです。

 一度お会いしたいなと思いながら、病院の中で全国各地を回ってそろそろ落ち着いて何かしようかなと思ったときに、南淵先生の名前が見当たらないのです。どこに行かれたのかなと思って、それからまた数年たったときは何でも切る一般外科8年目で、メインはがん手術をやっていたのですが、ちょっと自分の方向性を変えたいと思ったときに南淵先生の名前がふとまた浮かんできました。
 インターネットをやっていたのでホームページを調べてみたら、大和に南淵先生がお見えになると。私はそのとき茅ヶ崎に戻ってきたのですが、これはちょっと1回のぞいてみようかなとメールを打ちました。大学の後輩ではあるのですけれども全く面識がなく、同じグループ内で働いたときがわずかにあるのですけれども、驚いたことに私が突然出したメールに、その日の晩だったと思うのですがメールを返してくださいました。私のような者にとってはすごくうれしい内容で、「ぜひとも見に来てくれ」という話だったのです。私も時間を作って見学させていただいたわけなんです。
 そのときにお話をしたら、初めて南淵先生の言動を見た8年前の医者になりたてのころと全く同じこと、「大学はばかで、今の日本の医療はどうのこうの」とおっしゃるわけです。(笑)でも初志貫徹といいましょうか、その軸がぶれてないことがそのときに分かったのです。もう一つ、分かったのはこんなに大きな人だったんだと。僕がちびなのもあるんですけれども、会ったときはびっくりして「うわー」と思って。(笑)見学に行ったその日に先生の下で勉強させてもらおうと、即、決めました。いろいろごちゃごちゃがあって辞めるのに数カ月かかったのですけれど、こちらにごやっかいになって今年で丸5年になりました。
 ようやく去年あたりから、南淵先生から「ムトウ君も手術していいよ」とおっしゃっていただきました。そうこうしているうちに、今度は「こども医療センターで子供の勉強もしておいでよ」と半年も勉強に出させていただきました。4月から帰ってきて、久しぶりに大人の皆さんの新しい患者様のお相手をさせていただくようになったわけです。
 子どもを診ていたこともあるのですが、生まれついて本当に運命のいたずらで病気になってしまった方々に比べて、言葉は悪いですけれども、皆さんは日ごろの不摂生がたたって本当につけが回ってきたというような病気です。(笑)その手術を南淵先生がされて、私たちもさせていただくことがありました。その後は元気に退院していただくという形になるのですが、最近は南淵先生がご自分でもおっしゃっているように本当にテレビによく出ていらっしゃいます。つい最近、2チャンネルを回したら両方とも出ていらっしゃるんです。(笑)素人がそんなダブルブッキングしていいのかと、私は本当に陰ながら心配したのです。でも本当にお忙しく、世の中に病気というものを広報して回っていらっしゃいます。
 病院の中は、その代わりに私たちが力足らずですが、南淵先生の患者様で手術された後の管理、そして退院なさるときは最近は必ず言うことがあって「つけが回ってきてこんな病気になったんです。悪いところを一応は治したけれども、新品にはなってないんだ」と。(笑)車が好きなのでよく言うんです。「エンジンであれば悪いところが出て、そろそろ止まりそうなところをオーバーホールして良くしたんだ。ようやく性能が元の新品のときに近いぐらいにはなったけど古いまんまなんだよ。だからあとはきちんとメンテナンスして、しっかり長生きしてください」と。「長生きしてください」なんていい言葉は使わずに、「先が見えているんですから頑張ってください」という話をしているのです。(笑)
 でもそのときにも必ず言うことがあります。我々は確かに患者様の命を助けるのは当然の話ですが、それより先に「できたら手術前と同じか、それ以上に元気になっていただきたい」と思って手術をさせていただいているわけです。この会場にお見えになっている方は、ほかの何も知らない方が見られたら、絶対に心臓の手術をした人だなんて思わないと思うのです。それぐらい皆さんはお元気になられています。
 でも例えば公衆浴場でも温泉でもいいんですけれども、傷を開いて、みんなが「何ですか、その傷は」とびっくりするわけです。そのときに「実は何年か前に手術をして、こんなにほんとに元気になって。手術前のときはこわごわ生きていたのが今は何も心配せずに頑張ってやっているんですよ」ということを、どんどん世の中の人に広めていっていただきたい。南淵先生はテレビでやっているけれども、そうではなくて……。「やっている」って悪い意味じゃないですよ。(笑)
 でも皆さんは、じかに周りの同年輩の方にそういうように啓蒙していただきたい。要するに病気は怖いけどきちんとした治療を受けて、その後の自分の努力も当然です。そのまま引きこもるんじゃなくて、どんどん元気になるように自分で前向きにやっていただくとこんなに元気になるんだと。だからほかの病気でもそうなんでしょうけれども、病気があって悩んでいらっしゃる方に、「きちんとした治療を適切なところで受けて、その後はご自分が頑張れば、これだけ元気になるんだ」ということを啓蒙していただきたい。
 心臓病の患者さんだったらうちに来てくれたらうれしいなと思いながらも、それ以外の患者さんでも専門病院に行っていただければ、皆さんはやっぱりハッピーになると思うんです。私のような若輩者が言うのも何ですけれど、そのように手術を受けられた方は、受けてそれで助かった……。「助かった」なんていうのは本当に偉そうな言い方かもしれませんけれども、その後の人生といいましょうか、できましたらそれをご自分だけの、また家族のためだけではなくて、世の中の人のためにもそういう啓蒙をしていただけたらと、生意気とは思っているのですけれど、最近は口にするようにしています。(拍手)