こんにちは。皆さんの元気な姿を拝見して大変嬉しく思います。現在、大和成和病院では年々症例が増えてきまして、年間の症例総数は302件、バイパス手術は226件と全国でも大変注目されるようになってきました。
今日、皆様にお配りした日本経済新聞が「医療再生」という連載記事の中で、「良医を育てる」ということを取り上げています。
かつて私がオーストラリアの病院にいた時ですが、朝早く病院に行くとすでに年輩の教授が来ていて病棟をウロウロしていました。そして自分で血圧計を握って図りながら「調子はどうですか」と聞いています。日本では教授になると、患者とは口も聞きませんから、私は異様な感じがして違和感を覚えました。ところがオーストラリアでは偉い先生が朝早くきて回診に廻っています。私はオーストラリアで、日本の医療のおかしなところをまざまざと見せつけられたわけです。
外国では医者は一年交代で色々なところを歩きます。医療だけでなく、看護婦さんとのコミュニケーションとか、患者さんの社会的な側面の対応とか、そういったことを学んでいく厳しい道がありますが、日本ではそれが全然なくて、一つの病院に勤めたらその病院にずっといます、あるいは大学の医局の都合で関連病院を転々としています。これでは国際レベルの専門医は育ちません。
私どもではそういったものを打破して、独自に専門医を育てようと、千葉県松戸市の新東京病院、札幌市の北海道大野病院、そして大和成和病院の3つの病院で若手医師を研修生として受け入れ、各病院を1年交代で回り、心臓外科全般の技術を学んでもらおうと今年からスタートさせます。
今年の4月から厚生労働省は、医師の熟練の技がものをいう難度の高い手術について「症例数」の基準を設け、年間症例数の実績が基準に満たない場合は、診療報酬をカットするという制度改革を行いました。この「病院の格付け」といえる制度改革で日本の医療はどう変わっていくのかということを、このwホスピタウンx(医療情報誌)6月号の中で私と今日お招きしました京都大学の米田先生とで対談をしています。
おそらくこの改革は患者さんが「実力主義の病院選別」という行動に出ることで、一気に加速されると思います。こうした話をすると、私だけがうまいんだと思われがちですが、そうではなくて、私が手術が出来るようになった、あるいは難しい手術をやり終えて充実しているのと同じような感覚で手術に臨んでいる「良医」と呼ばれる先生方がたくさんいます。医療の信頼性、それを守り高めていこうということを職業倫理として生きている先生たちを広く育てていくということですね。
今日はもう1枚、心臓病などの専門医療の患者さんの流れを説明したイラストを用意しました。一番左が権威依存型。病院の大きさや大学病院の権威など抽象的で実体のない内容で患者をおびき寄せる手法です。次がディーラー依存型。患者さんやお医者さんを介して私のところに来るというケースです。例えば東海大学や北里大学、聖マリアンナ医大で診察を受け、そこの医者に言われて私のところで手術を受けるというやり方です。最後がダイレクトマーケティング型。これは患者さんが直接病院を選ぶという方法です。最近はこれが増えてきており、患者さんがインターネットなどを使って情報を集め、自分の意思で判断し行動していくというやり方です。
皆さんは大和成和病院で医療の現場をつぶさにご覧になられて非常に肥えた目を養われました。「良医」は必ずいますから、心臓以外の分野でもぜひ巷にいる良医に行き当たるように努力していただきたいと思います。
(この講演内容は幹事会の責任で概要をまとめたものです)
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