徳田雅直(大和成和病院リハビリ科主任・理学療法士) 2008年10月13日講演会(大和市保健福祉センター)

「心臓リハビリ」について

 ご紹介いただきましたリハビリテーション科で心臓リハビリを担当しています理学療法士及び心臓リハビリ指導士の徳田と申します(拍手)。
 私の演題は「心臓リハビリについて」ということです。今日ここにおられる皆さん方は、手術が終わって一段落した後、すぐにリハビリを開始されたと思います。「いやあ酷なことをするな」と思われた方もたくさんいらっしゃると思います。今日は何でそうやったのかということと、それがいかに後に結びつくかというお話をしたいと思います。

 今、最も注目されている心大血管リハビリテーション

 初めに現在のリハビリテーションについてお話しします。今、リハビリ業界は4つのカテゴリーに分かれています。一つ目は脳血管疾患のリハビリテーション。二つ目は運動器疾患のリハビリテーション。三つ目は呼吸器疾患のリハビリテーション、そして4つ目が皆さんがお受けになられた心大血管リハビリテーションです。この心大血管のリハビリテーションは、現在すごく注目されています。診療報酬はこの4疾患のうち2番目に高いんです。

 この心臓リハビリテーションは予防医学にも当てはまります。国としてはメタボリックシンドロームとか、そういうたぐいのものを心臓リハビリでもカバーリングして、病気をしない環境をつくっていただこうというのがその狙いです。
 まずこの「心臓リハビリの今」ということでトピックスをお話しします。そして次に心臓リハビリマップの紹介。少しわかりにくいので、後ほど執刀医の先生の顔写真を出してご自身の運動機能とかモチベーションがどこにあるのかを明確にしていただきます。その後に自分でできる簡単エクササイズ(運動)は、どういうものがあるかを提案していきます。今日はこの三つの構成でお話ししたいと思います。

 心臓リハビリテーションは目的意識をもってやること

 さて、心臓リハビリテーションは定義が非常に難しいものですが、わかりやすく言います。心臓病になりますと、心臓そのものの機能が低下します。そうすることによって身体的かつ精神的ダメージを受けて、日常生活、そして生命、人生の質がどんどん落ちていきます。ここを何とか運動や教育やカウンセリングによってそれを根絶やしにしていって、どこかでこの負の連鎖を切り、心理社会的、職業的に改善に導いていこうというのが心臓リハビリテーションの大枠です。
 その心臓リハビリテーションを成功させるためには、やはり目的を持って実施しないといけません。目的もその時期によってばらばらです。手術したてで行うリハビリと、1カ月たった後のリハビリ、6カ月たった後のリハビリ、1年たった後のリハビリというのは内容的に全然違いますし、目的意識を変えてやらないと効果が十分に上がらないんです。要するに効果的に運動するためには、目的をしっかり分けて運動することが非常に大事になってきます。
 まず、この真ん中に「離床」と書きました。早く起こしましょう、起きましょうということです。手術なさった後、皆さんもご経験されたのでよくご存じかと思います。早期離床することで寝たきりをまず防止すること。次に寝たきりを防止した後は立って歩いて日常生活をご自身で過ごしていただく、日常生活を自立するほうに持っていくということです。そして退院した後はなるだけ人生や生命の質を上げるために自分自身で運動したり、目標を持って旅行に行ったり、何らかのアクションを持って運動するということが大事で、これを「QOLの向上」と言います。

 心臓リハビリテーションをすることで寿命が延びる

 いま現在、皆さんが当てはまっているところはここです。社会復帰した後に寿命を延ばすこと。前回の順天堂大学の白澤先生の話にアンチエイジングがありました。最近、リハビリすることによって寿命を延ばすというエビデンス、根拠が出ました。どういう運動をすると寿命が延びるかというのが出ましたので、これも紹介したいと思います。
 時代の流れに沿って心臓リハビリはすごく変遷しています。最初はもともと心臓病になった方は動いちゃいけない、ベッドの上で安静にしてないといけないという時代が長く続きました。1940年代は絶対に起こしたり動かしてはいけないという時代だったんです。それが徐々に1970年代にわたって積極的に動いたほうが、より治りがいいというデータがたくさん出ました。みんな1970年代に盛んに早くリハビリやって早く起こしたほうがいいよという時代の先駆けとなったんです。
 それが1980年代に入り、じゃあこういう運動をするともっと効果的に効率的によくなるんじゃないかというものがアメリカから出されました。運動生理学です。運動して汗かいて心拍数を上げて、こういう生理的な反応をやればこういうふうな効果が出ますよというのが提唱されました。これは今でも覆されておりません。こういう正しい運動のやり方の内容が1980年代に出されました。
 心臓リハビリテーションということで効果的な運動をしないといけない、運動生理学的に基づかないといけない、とずっとこのやり方でやっていました。そうすると時間がかかってしまい効果が出るまでには相当長引いてしまう。そうこうするうちに循環器内科でカテーテルの治療がものすごく発達しました。カテーテルの治療のほうが心臓リハビリテーションよりもいいんじゃないかというデータがたくさん出たんですが、2000年に入って、いや、そうとも言えないということにもなってきました。
 カテーテル治療をやって血管を大きくしただけでは生命予後が延びないというデータが出ました。プラス、薬物療法と運動療法をすることによって寿命は延びますよというデータも出たんです。最近はもう少し進歩して、カテーテル治療群と心臓リハビリテーション群をずっと調査していき、その結果、長期的に見たら心臓リハビリテーションのほうが生命予後が長かったというデータが出てきました。これを見ると皆さんはびっくりするかもしれません。データを出したアメリカの方がまた批判を受けるといけないので、後ほどデータを出して解説したいと思います。
 現在は冠危険因子の是正やメタボリックのもととなるものを撃退しようと、予防医学的な要素を含んでいます。心臓リハビリはもともと安静から積極的な離床に入って起こしていって、運動生理学に基づく運動療法をやり、そして今は予防医学的なものにどんどん変わってきているということで、進んでいる最新の治療として位置づけられています。

 3つに分けられる心臓リハビリテーション

 心臓リハビリテーションの時期を三つに分けましょう、と先ほどのスライドで言いました。いま皆さんご自身の位置はフェーズ3(スリー)と呼ばれるもので、一番下のものになります。維持期のリハビリテーション。この目標としては生涯にわたる快適生活を現状維持して、向上していっていただくというのがポイントになってきます。2000年代は予防の時代、そして再発防止に向けたリハビリテーションを実践していかなければいけません。
 入院中は不必要な臥床を没して早く起きましょうと1970年代のリハビリをここに持ってきました。皆さんは入院中から外来、そして現在にわたって時代をまたいで治療されているわけです。入院中は1970年代のリハビリをお受けになり、そしていま外来で通ってる皆さん、自宅で頑張っている皆さんは1980年代の運動生理学に基づくリハビリテーションでご自身の体をよくしていっています。
 さあ、いま現在は予防の時代です。そして再発を防止する時代です。考心会のアンケートでも再発の不安が非常に多いですね。そういうことで何とかこの心臓リハビリを駆使して再発を防止できればと考えているわけです。
 この心臓リハビリの守備範囲はものすごく広いです。南淵院長にお願いして、病院の前の土地をこういうビルに建て替えていただくと非常にいいんじゃないかなと思っていますがc(笑)。1階から7階まで、心臓リハビリテーションにおける守備範囲というのはこれだけ広いんです。一言で、心臓リハビリ、イコール運動ではなくて、その中には生活指導であったり、栄養指導や禁煙、そして服薬指導などたくさんの患者さんの教育が含まれています。
 過去の患者さんの教育は、今こういう現場で最新の知識を得て自分の病気に立ち向かっていかなければ、運動一本では心臓リハビリテーションは成功しません。運動と患者ご自身の教育によって再発予防、そして新たな合併症の防止に向けて取り組まないといけないということで、非常に多くの知識と準備が要るわけです。

 運動すると何が変わるか? 体力向上・症状軽減・筋力アップ

 心臓リハビリテーションの効果ということで、少し整理したいと思います。まず運動すると一番何が変わるかというと体力が向上します。これは皆さん、手術をお受けになる前とお受けになった後、どーんと体力が下がったと思います。そして徐々に1週間、2週間かけてずっと右肩上がりによくなっていきます。この心臓リハビリテーションは体力の向上が根拠として一番に挙げられます。
 その次は症状の軽減です。狭心症で息切れ感があったりというのが、心臓リハビリテーションによって軽減していきます。次にバイパスをお受けになった方であればよくご存じですが、血管が細くなっていったりとか、コレステロールがたまっていってその先の動脈が詰まって悪くなったりしますが、心臓リハビリテーションをすることによって、心臓血管である冠動脈の動脈硬化の進展を抑えて、動脈の径を大きくするという効果があります。また、冠動脈の機能改善を示す効果もあります。
 次に体力向上に付属して筋力も上がってきます。弁膜症の患者さんで心不全になった方というのは筋肉の質ががらっと変わります。持久系の筋力、要するにマラソンの筋肉から短距離選手の筋力に変わっていくんです。病気によって筋肉が変化していくのが心不全の特徴です。心不全の方にただ単に歩く運動だけじゃなくて、心不全の方には心不全なりの運動療法があります。タイプ2(ツー)と呼ばれるものから、タイプ1(ワン)、要するに持久筋から短距離選手の筋肉に変わっていく。これはよくないことなので短距離選手から長距離選手の筋肉に変えていくリハビリをしましょうということで、「筋力の向上」と書きました。
 次はメタボリック対策です。かなりこれは今から根拠が蓄積されていきますし、心臓リハビリテーションをすることによって、冠危険因子を是正していくことになります。南淵先生が先ほど自分はBMIが高いとおっしゃいましたけれども、ぜひこの心臓リハビリテーションをお受けになってほしいですね。(笑)
 次に、運動した後にはリラックス効果が出てきます。緊張状態が長くずっと続くとやはり人間というのは消耗します。緊張状態があってリラックス状態があるという兼ね合いがないと長生きしません。運動時はぐっと交感神経を活性化して興奮状態にありますが、運動が終わった10分、 20分後にはリラックス効果が得られます。そして運動すると血はさらさらになります。要するに血流がずっと体中を回りますので一定のところには止まっていない。生命予後が改善するということです。

 心臓リハビリを受けてない方の生存率は56%

 このスライドを出すと、皆さんは自分がいま運動しないから、すぐにでも運動しないといけないんじゃないかと勘違いされます。これはアメリカの方が言っていたことで、長期的に見たデータです。向かって右は運動しない方、こちら(左)が運動をしている方で6年生存率を見ました。5年ちょっと区切ると、この点線は一般の方の寿命です。経過観察でいくような寿命で予測値がずっと出ています。
 心臓リハビリテーションを実施した方は、一般的な手術を受けてない方と同じような寿命経過をして過ごされますが、心臓リハビリテーションを受けてない方はこの5年のあたりで生存率がすっと下がって56%、要するに44%が早く寿命を切ってしまうことになります。心筋梗塞の再発でも心臓リハビリをやったほうが非常によかったというデータも出ています。ただ、カテーテル治療だけじゃなくて、カテーテル治療とお薬と運動療法で生命を延ばすということになっています。またこの辺も知っておくといいと思います。ぜひとも運動療法をやってまっとうな寿命を経過してほしいものです。

 心臓リハビリの事故は極端に少ない 0.005〜0.021%

 ここまでは運動療法、心臓リハビリテーションはいいよということをたくさん言いました。でもやはり利点もあれば欠点もあります。欠点がいま皆さんが怖いところにあって、これだけ運動したら心臓が止まるんじゃないか、また詰まるんじゃないかと思う方がいらっしゃいます。
 今年2008年に出たデータをご紹介します。心筋梗塞のリハビリ、狭心症、バイパスも含めて全部のリハビリテーションの実施中、治療を要する心臓血管の事故です。何か起きたというのは40万件中85件で0.021%でした。これは決して多くない、少ない数字です。そしてなおかつ寿命が尽きてしまうんじゃないか、心臓が止まってもう1回カテーテル治療やバイパス治療をしないといけないんじゃないかという重篤な心臓事故というのは0.005%。40万件のうち19件。ぴんとこないのでわかりやすく言います。宝くじで言うと3等が当たるぐらいです。(笑)あまりいい当たりじゃないです。宝くじに当たりたいですが、これは当たりたくないですよね。
 このくらい心臓リハビリテーションを頑張ってやっても、何か起きるイベントというのは少ないのです。ですから管理された運動療法であれば確実に間違いは起きないです。間違いが起きるのは運動をするときの前の状態が悪いときです。おしっこも出にくい状態で運動を頑張ってしまった、手足がずっとむくんできて体重が最近3キロか4キロも急激に増えた方、息切れがくる、寝ても呼吸困難感が消えない方が運動療法をするとこの結果になる可能性は十分に秘めてます。運動をするときには自分自身の状態が一番わかると思います。今日は運動しないほうがいいかなという日は運動しないほうがいいです。どれぐらい運動すればいいかというのは、また後ほど全体的なスライドでまとめてご説明します。
 以前まとめていただいた考心会のデータを、南淵先生と同様に私もほかの講演会に行くときに使わせていただいています。患者さんのアンケートでこれだけまとまった内容というのは全国的にいってもないです。これは非常にまとまった、いいデータだと思います。我々医療従事者はこれを真摯に受け止めて解釈しないといけないと思っています。

 心臓リハビリで再発を防ごうー食事と運動が決め手

 その中では手術を受けた後の不安というのは再発です。再発を何とか心臓リハビリテーションで防止しようと考えていますし、健康維持に取り組んでいることです。先ほどの南淵先生のスライドと同じですが、食事と運動です。ただし、運動療法をされている方は全体的に半分だったんです。それ以外の方はもしかしたら食事療法やサプリメント、人間ドック、東洋医学のほうでカバーリングされているかもしれませんが、やはり運動療法のほうが効果的、効率的に体をよくします。
 この半数のみ、というのが私の中で意外な数字だったんです。もう少し皆さん高いかなと思ったんですが、もう1回このアンケートをとるときには、ここが70%、80%ぐらいまでいくように何とかしなければいけないと私自身は思っています。
 この中で少し前のスライドをごらんください。これは私が考えた図ですが、ほかの人がよくまねするんです。自分自身がどこの場所にいるかを明確にするものです。まずこの縦軸です。運動をしているか。一番下に行くと、運動をしてないか。運動することによって体の反応がどうなっているか。運動することの必要性を理解しているか、理解しない、というふうに縦軸と横軸に分けています。

 自己管理組から学習組、実行組、変化組まで

 自己管理組と書いた一番ここは運動もしているし、その必要性をちゃんとわかっている方。これは自己管理組といって、ものすごく優秀な方々です。この方々は3カ月でクリアできる目標をぜひ設定してください。何で3カ月か。効果が出るのが大体3カ月ですし、季節は4季節あります。12カ月ですから季節ごとに旅行に行っていただく計画を立てていただければ非常にいいんじゃないかなと思っています。
 次に学習組。運動しているけれどもあんまり運動することの理解がわかってない。何か知らないけど運動がいいよというから運動をやっている方。これは学習組になっています。効率的に実施するためにはこういう勉強会に参加して知識を高めていきましょうということです。
 次に必要性はわかっている、運動しないといけないのはわかっているんだけど運動してないという方です。お酒でいうと、お酒は悪いからやめようとわかっているんだけどやめられないというパターンです。しっかり実行していきましょうとなります。
 最後に一番頑張ってほしいところ。運動もしないし、運動する必要性も理解してない。多分、皆さんはここにいないと思います、と私は信じたいです。(笑)ここを出すに当たって「うん」ということがあればどうかなと思ったんですけどね。こういう方はうちの外来心臓リハビリテーションに来ていただいて何とか頑張っていきましょうということです。


 執刀医(心臓外科医)の先生方はどこにあてはまるか? 

 さあ、これを当院執刀医の先生方がどこにあてはまるか聞いてみました。皆さんにこれを見ていただきたいです。まず武藤先生です。武藤先生はこの前、初めて情報誌『リベルタ』に書かれました。普通は小坂先生と青木先生が書いていたので名前と顔が載るんですが、武藤先生は自分のひげが嫌だからと顔は載せなかったんです。今日は顔写真つきで武藤先生を紹介します。(笑)
 武藤先生は自己管理組です。毎朝自転車で通われています。高いマウンテンバイクを買ってヘルメットもついています。手術着じゃないですよ。もちろんタイツをはいてすうっとおうちに帰られるわけです。武藤先生は運動もするし、そういう必要性も理解していらっしゃる。優秀です。(笑)
 次に最近入られて、南淵先生から「完成された外科医」と評されている奥山先生です。奥山先生は必要性をしっかり理解されています。端っこに書いているのは訳があります。以前は運動されたそうで、大和成和病院に移られて以前勤めていた先よりもこっちのほうが忙しいから最近は運動ができてないということです。病棟や手術室、外来でたくさん頑張ってらっしゃいますから運動は今できていない、とご本人からのコメントでした。
 次に米田先生です。米田先生は私が一番最初にテレビで見たときには自宅で走っている映像が流れました。だから先生に「今でも運動されているんですか」と聞くと、実家から大和成和病院に来たりとか、また名古屋のほうに戻られるとか、そういう移動的な問題で運動ができていないということです。でもリハビリの必要性は知っているということで、こちらのほうに書かせていただきました。ぜひとも米田先生にもまた運動に参加してほしいです。体重はそんなに変わってなさそうなので大丈夫かなと思います。
 さあ、あと2人ですね。だれが出てくるんでしょうか。来ましたね、倉田先生です。倉田先生は今部長になられて大変で、ずっと手術室に入られてますし、外来も月曜日と土曜日を持っておられます。そして病棟のほうも回られています。先生は全く自分自身の時間がないぐらいに頑張ってらっしゃいます。倉田先生もリハビリを多分好きと思いますから、知っているよということです。でも自分自身も運動できてないんだということをおっしゃってましたから、倉田先生にもちょっと運動をしてほしいです。少し前まではこの写真よりも少し太ってましたけども、最近は多忙過ぎてやつれていらっしゃいます。外来で会ったときには、「倉田先生、頑張ってご飯食べてください」ということをお伝えしていただくと元気づくと思います。
 さて南淵先生です。どこにいるでしょうか。来ました。ここで止まってほしくないですね。一番端っこ。運動から一番遠ざかっている南淵先生です。(笑)体型も一番大きい。ご本人に失礼がないようにアンケートでどこに行きたいですかと先生に確認したところ、「僕自身は運動していないから一番下になるよ。でもリハビリの重要性は一番わかってるから一番左で」ということで指定を受けましたので、失礼がないようにこっちのほうにさせていただきました。一時期、南淵先生はおやせになったんです。今はまた元に戻ってらっしゃいます。
 最近、私自身の体重が何か知らないけど減っているんです。南淵先生に、病院でも「よくやってるね」とおっしゃっていただいて、その都度、何か大きな講演会とか資料をまとめたりという用事が舞い込んでくるわけです。この考心会というのはその最たるものかと思います。そういう感じであんまり夜が寝れてないもんですから、最近私自身がやせていって、南淵先生はどんどん前の状況に戻っていく。(笑)
 やっぱり先生方はよくわかってらっしゃるので自己管理組の方と実行組に分かれます。実行組はほんとに多忙ですからね。このスライドに書かせていただきましたが、ほんとは運動したい気持ちはあるけれどもできていないというのが現状でした。

  変化組の方は心臓リハビリ外来をおすすめします 

 さあ、皆さん、今ご自身はどこに当てはまるでしょうか。もし変化組にいらしてる方は動かないといけません。実行組、運動の必要性はわかっているけど運動できていないという方はこのスライドに移らせていただきます。
 まず当院の外来の説明をさせていただきます。外来に興味がある方というのはこんな感じでやっていますよということで説明します。この写真は以前お受けになったリハビリ室よりもかなり違うと思います。手術件数も増え、リハビリテーション科の部署が潤っていますから機械もたくさん買ってもらいました。現在はこういう感じで看護師さんもついて運動しています。外来は毎週火、木、土の週3回行って、午前の部と午後の部があります。一日10人ぐらい、月に80人弱いらっしゃって運動療法を頑張っています。
 もしご自身が変化組にいるという方には私に一報ください。何とかしていい環境を整えたいと思っています。心臓リハビリテーションの外来は運動だけじゃなくて、もちろん教育活動にかなり力を入れています。2008年の年間計画をいま実行中です。管理栄養士の方、薬剤師の方、医師の先生、私たちです。そして糖尿病の療養指導士の方など、たくさんの他職種を含めて講義をやっていただき、知識の向上を身につけることで勉強会だけ参加という方もありです。
 大和成和病院のホームページにリンクを張っているので見ていただいて、開催日など、もしよかったら当院に問い合わせていただければと思います。内容はすべてホームページで公開しますから、受けなくてもこういうのがあったよというのがわかります。
 さあ最終スライドに近くなってきました。自宅でできる簡単エクササイズということで、この辺を少し頑張っていきたいと思います。

 息を吐きながらしっかりとストレッチを行う

 まず運動するに当たって一番大事なのが、急に走りだしたりすると腱を痛めますから、まずしっかりとストレッチするということ。アキレス腱と太ももの筋肉、ふくらはぎの筋肉はすべて伸ばしたほうがけがをしませんから、このストレッチをしっかりしましょう。注意点は弾みをつけずに大体10秒から15秒ぐらい、ふーっと息を吐きながらするほうが効果的です。アキレス腱伸ばしと太もも、内もも伸ばしです。歩くとき、自転車こぎするときはこの二つぐらいで構いません。
 先ほど、心臓弁膜症の方、心不全の方のリハビリと言いました。心不全と、疲れて息切れ感があったりという感じで手術なさった方のリハビリはやはり筋骨格系を変えるべきです。筋肉トレーニングを中心にやったほうが運動パフォーマンスも絶対伸びます。要するにこの日常生活というのは持久性の運動がずっと連なっていますから、この筋肉は少ないと歩けなかったりとか息切れ感が増したりとか、すぐにへばるというのがあります。
 心不全になった方というのは少し運動を変えます。おうちでできる運動というのは、ベッドに寝ておしりを上げる運動とか、そのまま足を上げ下げする運動。立ってできるのはスクワットです。ひざを曲げたり伸ばしたりする運動。これともう一つ、かかと上げの運動です。この4パターンです。
 私たちの世界では高齢者の方には普通3パターンしか指導しないでくださいと言われてます。でも皆さんは、私が今日見る中で目が生き生きしてますし、肌つやも若いので4パターン持ってきました。要するに3パターンまでしか普通は覚えられないというデータが出てますが、そんなことはないと私は思ってます。4パターン用意しましたので、ぜひ覚えて帰ってください。

 1日に2回、夕方が効果的 歩行は1日4,000〜8,000歩

 ここで回数的には大体8回から15回を1セットとして、一日2回ぐらい行えば効果的です。そして朝一番じゃなくて夕方にやるほうが筋肉トレーニング的には効果的です。筋細胞を壊しますので、夜や夕方にやってそのまま寝るでしょう。皆さんは朝早くて夜寝るのが早いと思います。そこで夜十分な回復をとると筋肉のパフォーマンスがもっと伸びますから、朝一よりも夕方に筋肉トレーニングをすること。大事なのは息を止めないで、息を吐きながらやるのが大事です。この四つです。
 次にバイパス手術をお受けになった方。大事なのはやはり歩くことです。先ほどバイパス手術で血管の径が変わると言いました。運動することによって血管を広げさせようとする物質が出てきます。これが一酸化窒素と呼ばれるもので、発見した方は実際にノーベル賞ものだったんです。実際に運動することによって一酸化窒素を産生して血管を広げていく。これはほんとにいい根拠になっています。
 実際どのような運動がこの一酸化窒素を産生するかといいますと、少し息切れ感がある運動をやったり、週5回の自転車運動を2カ月やる。これはすごく長いです。そして一日20分から30分の歩行と書いていますが、なかなかこれを達成できる方は少ないと思います。自転車にずっと乗るというのは非常に厳しい。おうちに自転車マシンがあれば一番いいんですけれども、ない方は何をすればいいかというと、手軽にできる有酸素運動は歩行です。
 歩行を行ったほうが効果的です。女性は4千から6千歩ぐらい、男性は6千から8千歩。これは運動を目安とすれば、後で日常生活が大体2千歩で済みますから1万歩以内です。ひざや足腰が悪い方は1万歩以上歩くと必ず痛くなります。外来で通っている方で先生から「頑張って歩いてください」と言われて一日2万歩を歩かれた方がいらっしゃいますが、ひざを痛くしたんです。それで運動を少し制限して毎回実施したらよくなって体重も減っていって、ひざの痛みもなくなったということで、やり過ぎは駄目です。
 そして時間的に一酸化窒素が発生する時間は20分以上です。20分以下の運動は発生しないので、できれば運動を20分以上継続していただければ効果的かなと思います。大事なのは必ず履きなれた靴で行ってください。違う靴でやると、まめができてかばって歩き、ひざや腰を壊しやすくなります。できれば履きなれた運動靴で実施していただければいいと思います。

 有酸素運動は食後1〜2時間後にやると効果あり

 運動のまとめです。運動としては有酸素運動がいい。有酸素運動はご飯を食べて1時間から2時間後やると血糖の吸収もよくなるし、消化不良も起こしません。運動の時間は大体40分から60分未満。60分以上やっても構いませんけれども発汗量は変わりません。汗をかく量は60分過ぎても変わらないので、大体40分から60分間実施したらいいと思います。
 そして皆さんはこの週2、3回でいいんです。毎日しなくてもいいんです。何かというと、筋の回復は年齢がたてばたつほど遅くなります。毎回すると全部筋肉の細胞が壊れていったのが積み重なりますから、週2、3回ぐらいが一番筋肉のパフォーマンスも伸びますので毎日しなくても構いません。だから当院の外来でもいらっしゃいますが、自身の回復と体を動かしたいという方は毎日されても構いませんが、筋肉トレーニングはセキュリティー的に毎日しないほうがいいです。筋力トレーニングは大体週2回から3回。歩行は毎日しても構いません。その辺は自分自身で少し調整していくといいと思います。雨の日は筋肉トレーニング、晴れた日は外歩きという感じに分けたほうがいいと思います。
 ラストのスライドになってきました。この心臓リハビリテーションは包括的という言葉がよくつきますがやはりそうなんです。患者さんをサポートするのはお医者さんであったり看護師さんであったり、私たちであったり、管理栄養士さんでもあったり、臨床心理の方、そしてソーシャルワーカーさんとかご家族、地域を含めて心臓リハビリテーションというのは成り立っていきます。相談する方がご家族とか先生、主治医も多いと言いましたけれども、こういうコ・メディカルのスタッフにも相談していただければ何かしらの解決の糸口になると思います。ぜひ相談していただければいいと思います。
 これは私がいつも最後に使うスライドです。「運動とは」という意味です。運動とは運をいい方向に動かすと思ってください。これ、完全に駄じゃれです。(笑)やっぱり運をいい方向に、プラス方向に持っていったほうが体も伸びると思います。ぜひネガティブな考えじゃなくポジティブにやっていかれれば長生きするんじゃないかと思います。私たちがバックアップしていますから何かあればご相談ください。ご清聴ありがとうございました。(拍手)